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Googleコアアップデートでリスティング広告はどう変わる?最新動向

高田晃太郎
Googleコアアップデートでリスティング広告はどう変わる?最新動向

**Googleは毎年複数回のコアアップデートを実施し、2024年3月は数週間にわたる大規模更新を告知した。**¹² コアアップデートは基本的にオーガニック検索の評価システムを対象にするが、リスティング広告(検索連動型広告)が無関係でいられるわけではない。検索結果の構成や意図解釈が動けば、同じキーワードでも発生するクエリの分布が変わり、クリック配分、CPC(クリック単価)、CVR(コンバージョン率)、さらには入札戦略の学習にも波及する。実務では、アップデート直後の短期にCPCが大きく動いたり、クエリが長文化する事例が報告されている。オークションの仕組み自体は従来通りでも、入力される需要の形が変われば、出力される指標は揺らぐからだ。ここでは、リスティング広告の運用現場に効く視点で、最新動向と対応策を整理する。なお、Googleは2024年8月にもコアアップデートを公表しており、年内に複数回の大型更新が実施されている。⁷

コアアップデートは広告にどう波及するのか

まず押さえておきたいのは、コアアップデートが直接書き換えるのはオーガニックのランキングであり、広告のアドランク計算式や入札のロジックではないという事実だ。¹² とはいえ、検索結果ページの顔ぶれと情報設計が変われば、ユーザーのクリック選好は連鎖的に動く。上位の情報ニーズがより「調査寄り」に寄ると、同じ語でもコンバージョン意図の濃いクエリが薄まり、広告のCVRが一時的に下がる。逆に商業的ページが押し上がると、広告とオーガニックの競合関係が近づき、指名に準ずる低CPA(獲得単価)ゾーンのインプレッションが増えて全体の効率が改善することもある。オーガニック側の変動が有料検索(リスティング広告)に波及しうる点は、過去から実務家・業界媒体でも一貫して指摘されている。⁸

ここでの「リスティング広告はどう変わるか」を具体化すると、短期には次のような変化として現れやすい。SERP(検索結果画面)上で情報系コンテンツが増えると、上部広告の相対的な視認性が高まり、クリック配分が広告側に流れやすくなる。クエリの長文化により、部分一致の拡張度合いが広がり、マッチタイプごとの入札効率が変わる。意図の混在が進むため、同じキーワードでも配信される検索語句の質がばらつき、スマート入札の再学習が必要になる。広告の枠数や表示位置のポリシーが直接変わるわけではないが、結果として「どのクエリで広告が選ばれるか」という確率分布が更新され、CPCやCVRの揺れとして可視化される。

近年はAI Overviews(旧SGE)や検索機能の強化が、情報探索の完結性を高めている。米国先行の機能展開では、情報収集フェーズの一部がAI回答内で満たされ、クリック前の満足度が変わる兆候が出ている。特にポストAIモードでは、検索クエリの平均語数が伸びるなどのシフトが報告されており、広告側が受け取るトラフィックの質や配分にも影響を与えうる。³ 日本での本格展開が進めば、「クリックされるべきクエリ」そのものが再定義される。広告はオークションの機械学習によりリアルタイムで適応するが、学習対象のデータが変わるなら、運用側は計測と分解能を上げ、学習を助ける設計に切り替える必要がある。

クリック配分の変化と短期的なCPC上振れ

B2B領域など一部のアカウントでは、大規模アップデートの直後に、ブランドを含まない汎用語のクエリで平均掲載順位が変わらないにもかかわらず、CPCが上振れし、同時に検索語句の平均文字数が伸びるといった現象が観察されることがある。背景には、オーガニックの上位面が情報系コンテンツに入れ替わり、広告枠が相対的に「最後の商業的な導線」として選ばれやすくなったことがある。結果として広告クリックが増える一方、問い合わせ率は短期に揺れ、スマート入札が新しいクエリ構成を学習し直すまでの間に変動が拡大する。

この局面では、インプレッションシェアやオークション分析の「重複率」「上位表示の重複率」(広告主同士の同時表示割合、かつ上位枠での同時表示割合)を追い、競合の出稿態度の変化を読み解くことが有効だ。競合が調査系クエリを避け、より商業寄りに寄せているなら、同じ予算でも取りに行くべき領域は変わる。**「どのクエリ集合で勝つか」**の意思決定を明確にするだけで、無駄なCPCの上振れは抑えられる。

品質シグナルと広告の関連性を守る設計

アドランクは入札単価だけでなく品質シグナルやその場の予測効果で決まる。具体的には、期待クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性などが考慮される。⁴ コアアップデートでクエリの文脈が変わると、RSA(レスポンシブ検索広告)のアセットとランディングページの整合が崩れやすい。RSAは見出し最大15、説明文最大4を登録できるが、すべてを漫然と入れるのではなく、クエリ意図を三層(調査、比較、購入)に分けて、それぞれに強いコピーと内部リンク構造を割り当てる。固定(ピン留め)の使い過ぎは学習を阻害するが、ブランド保護や法務要件のある表現だけは第一見出しに固定し、残りは学習に委ねるとバランスが良い。「関連性の担保」はCPCの節約であり、学習の近道でもある。

実務で先に動くべき4領域

運用の現場で効くアクションは、計測、入札、クリエイティブ、予算配分の四つに集約できる。いずれも派手ではないが、アップデートの揺らぎに対しては堅牢性を高める順序がある。

まず計測から着手する。ブランドとノンブランド、指名と準指名、汎用語を分離して可視化し、Google広告の検索語句とSearch Consoleのクエリを日次で突き合わせる。GA4はデータドリブンアトリビューションが標準だが、アップデート期間中はラストクリックの補助レポートも併用し、**「本当に最後の一押しになった接点」**を確認する。⁵ オフラインの商談化や受注データがあるなら、遅延を考慮したコンバージョンインポートを見直し、学習対象のシグナル鮮度を確保する。学習が古いシグナルに縛られると、クエリ構成変化の読み替えに遅れる。

入札は過度なハンドリングを避けつつ、ガードレールを用意する。tCPA(目標コンバージョン単価)やtROAS(目標広告費用対効果)を使うなら、ポートフォリオ単位の上限・下限CPCや入札上限を状況に応じて設定し、異常時に燃え尽きない枠を作る。特にアップデート直後はCVRの分散が大きくなるため、学習安定のためにキャンペーン統合を急ぎ過ぎない。日次の目標変更は学習リセットを招くため、週次での漸進を基本にし、「実験」機能を使った50%スプリットでの比較に落ち着かせると因果が読みやすい。

クリエイティブでは、RSAのアセットを意図三層で再編し直すと同時に、サイトリンク、構造化スニペット、コールアウトを活用して「比較」「価格」「導入事例」への導線を強化する。オーガニック面が情報系に寄ったときほど、広告は商業的な着地で差別化できる。ランディングページはE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)とHelpfulコンテンツの観点で再点検し、一次情報、実測値、導入実例などの検証可能な要素を追加する。これらはSEO目的で語られがちだが、広告の品質シグナルとしても効く。¹²

予算配分は、アップデート期間に一時的な再配分を許容する。指名・準指名の守りを厚くし、汎用語は除外キーワードの体系化で無駄撃ちを抑えながら、広めのマッチタイプはスマート入札とセットで使う。広げるほどに学習が必要になるため、カスタマーマッチやリマーケティングのオーディエンスを掛け合わせ、購入可能性の高い層に限定するのが現実的だ。

ケース:B2B SaaSで起きた現象と対処

B2B SaaSの運用で観察される一般的なケースとして、コアアップデートの週にオーガニックの新規ユーザーが目に見えて減少し、同時期にノンブランドの広告インプレッションが増えることがある。CPCは上振れし、問い合わせ率が下がる一方、検索語句を精査すると比較系クエリの比率が上がっている、といった状況だ。ここでは広告グループを意図別に再編し、比較意図には事例・料金表を明確に打ち出したLPに切り替え、購入意図の強いクエリは完全一致で囲い込む一方、近しいが質の低い語は段階的に除外する。こうした調整を行うと、数週の再学習期間を経て指標の安定が戻り、意図別の配信で商談化率が改善するケースがある。変動の原因を過度に一般化するより、**「意図で分けて、意図に合わせて見せる」**という原則に忠実であることが効いた例だ。なお、当該期間の更新はGoogleからも大規模な品質改善として公式発表・報道がなされている。¹²

技術基盤とデータ分解能を上げる

コアアップデート期に強い運用は、道具立てが整っている。まずクエリレベルの計測粒度を確保するために、Google広告の検索語句レポートとSearch Consoleのクエリを統合し、日次の差分を記録する。可視性の制限はあるが、十分なサンプルがあれば傾向は読める。GA4の探索でディメンションに「セッションの参照元/メディア」「キャンペーン」「検索語句(可能な範囲)」を掛け合わせ、ランディングページ単位でCVRと直帰率の歪みをチェックする。歪みが大きいページは、広告とSEOの両方でメッセージの再調整が必要だ。オフライン連携は、揺らぎに強い。Google広告への拡張コンバージョンやオフラインコンバージョンのインポートを整備し、商談化や受注の質で最適化する。コンバージョン遅延が長いB2Bでは、プロキシ指標(例:高意欲の資料請求)を併用し、短期の学習と長期の質を両立させる。データ同化の鮮度を高めるために、毎日一定時刻のインポートを自動化し、学習に最新の質を反映させる。入札はデータの質に従う。

また、検索とPMax(Performance Max)の境界も見直したい。PMaxは検索在庫にもアクセスするため、コアアップデートによる検索行動の変化はPMaxの獲得原資にも影響する。ブランド保護の観点からは、ブランドキャンペーンを明示的に独立させ、PMaxのブランドトラフィック吸い上げを抑える設定にするのが安全だ。指名での効率は守り、ノンブランドはPMaxと検索で役割分担を決める。こうすることで、アップデートによる需要の揺れがどちらの器で吸収されているかを読み解ける。⁶

リスク管理と変更管理の作法

大きく環境が動くときほど、運用の変更管理が成果を左右する。アップデート週は構造の大規模変更を避け、仮説を一つずつ検証する。命名規則に日時と目的を埋め込み、変更ログを残すだけで、因果の追跡は劇的に楽になる。週次のレビューでは、アトリビューションモデルを固定し、KPIの定義を変えないことも重要だ。⁵ 定義が動けば、良し悪しの判定軸も動いてしまう。予算の再配分は、守り(指名・準指名)を確保したうえで、攻め(汎用語・比較意図)に小さく試す順番で進める。変数を増やさず、速度を保つ。

法則化できる原則と、次の一手

ここまでの実務から、コアアップデート期のリスティング広告運用にはいくつかの再現性ある原則が見えてくる。広告オークションは変わらないが、需要の形は変わる。だからこそ、学習の対象に最新の質を流し込み、意図で分けて見せ方を合わせ、実験で因果を確かめるという基本に立ち返る。RSAのアセット設計とLPのE-E-A-T強化は、SEOと広告の双方に効く同根の投資であり、部門横断の連携がROIを押し上げる。AI Overviewsの広がりは、上流の調査系クエリを一部吸収する一方、比較・購入の底流を濃くする可能性がある。³ 下流を取り切る器の整備こそ、今やっておくべき準備だ。

【まとめ】

コアアップデートは、検索広告のルールそのものを変えるイベントではない。¹ しかし、ユーザーの意図がわずかに傾けば、主要なメトリクスは大きく揺れる。だからこそ、データの分解能を上げ、学習に新しい質を供給し、意図別の見せ方に磨きをかける。ブランドを守りつつ、比較と購入の導線を最適化し、実験で因果を確かめる習慣をチームの標準にしよう。次のアップデートが来る前に、あなたのアカウントで最初に行う一手は何か。まずは指名・準指名・汎用語の三分割から、現状のクエリ構成とLPの整合を点検してみてほしい。揺らぎに強い運用は、準備と反復から生まれる。

参考文献

  1. Google Search Central Blog. What web creators should know about our March 2024 core update and new spam policies. https://developers.google.com/search/blog/2024/03/core-update-spam-policies?hl=en
  2. Search Engine Land. Google released massive search quality improvements with March 2024 core update and multiple spam updates. https://searchengineland.com/google-released-massive-search-quality-improvements-with-march-2024-core-update-and-multiple-spam-updates-438144
  3. Search Engine Land. Google Ads data shows query length shift post AI mode. https://searchengineland.com/google-ads-data-shows-query-length-shift-post-ai-mode-458162
  4. Google Ads ヘルプ. 品質スコアについて(期待クリック率・広告の関連性・ランディング ページの利便性)。https://support.google.com/google-ads/answer/6167118?hl=en
  5. Google アナリティクス ヘルプ. Google アナリティクス 4 のアトリビューション。https://support.google.com/analytics/answer/10596866?hl=en
  6. Google Ads ヘルプ. ブランド設定(Search と Performance Max)。https://support.google.com/google-ads/answer/13721847?hl=en
  7. Google Search Central Blog. August 2024 core update. https://developers.google.com/search/blog/2024/08/august-2024-core-update?hl=en
  8. Search Engine Journal. Do Google’s Frequent Algorithm Updates Affect Paid Search? https://www.searchenginejournal.com/googles-frequent-algorithm-updates-affect-paid-search/121708/

果要

コアアップデートはオーガニックの話、そう決めつけていないだろうか。実際には検索行動とSERPの変化が広告のCPC・CVR・クエリ構成を動かす。AI Overviewsの影響も踏まえ、計測・入札・クリエイティブ・予算配分まで、CTOと運用リーダーが今すぐ整えるべき実務を最新動向とともに整理する。